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「大変申し訳ありませんでした」
自分のとった行動によりカギヤに必要以上の怪我を負わせてしまったこと、モグリに心配をさせてしまったことを、それぞれ伝えて心から詫びた。
「もういいよ……あの時、僕を助けようとして……戻ってきてくれたんだって……分かってるから……君の気持ち……嬉しかったから」
カギヤは口内の痛さも忘れて、氷動に本心を伝えた。
「まったく何を考えているんだ!今度、病院を脱走したら私は知らんぞ!」
厳しい言葉とは違い、モグリの目にも涙が浮かんでいる。
氷動は「96」から逃亡したとして処分されずに済んだのだと、彼の姿を実際に見たことで安堵したのだろう。
氷動の帰還を我がことのように喜ぶカギヤ、アザミに鎮痛剤を託したり心配をして真剣に叱ってくれたモグリ。
自分の命だけじゃなく、この人たちの心まで一緒に葬ってしまうところだったんだ。
氷動の体が震えたのは、傷の痛みによるものではなかった。
「……ありがとうございます」
頭を下げた氷動は、生まれて初めて人前で涙を流した。
まるで彼の心を凍りつかせていた氷が、人の温かさに触れて溶けだしたかのように。
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