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カギヤと楽し気に会話するアザミの後ろに、マリネがポツンと立っていた。
氷動がまともにマリネに会うのは初めてだったが、カギヤから「可愛らしい少年にも少女にも見える外見」という特徴を聞いていたので、本人だとすぐに分かった。
そしてゲームショップで襲撃を受けた際、アザミと共に救助してくれたことについて礼を言おうとしたのだが、マリネは暗い表情をしてうつむいたままである。
「……」
その様子に氷動は、出しかけた言葉を飲みこんでアザミを見た。
氷動の視線に気付いたアザミは軽く頷くと、自ら病室の奥にあったテーブルと椅子二脚を手際よくベッドの間に配置した。
「カギヤと氷動はベッドの上でいい。ほら、マリネ座れ」
「……はい」
元気のない返事と共に、マリネが音もたてずに座る。
「どうしたの?マリネちゃん」
カギヤが見かねて、そっと声をかけた。
「……くやしいス」
「え?」
「……負けたっス」
「班長、一体……?」
マリネの落胆ぶりが思いのほか酷かったので、カギヤは質問対象者をアザミに代えた。
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