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【16】氷動の能力
カギヤは実際に自分が見たゲームショップの状況と今アザミに聞いた話を、自分のノートにまとめて書き出していった。
・店長の黒沼は、たった5分の間に全店員がゲームショップから何も持たずに、慌てて逃げ出したように見せかけた。
・逃げた直後の店員たちからは怪しい持ち物が発見されなかったため、まだ「極秘データ」は店内に残されており、後で誰かが取りにくると思わせた。
・そして逃げる際に事務室のパソコンの中に用意していた「偽データ」をわざと消去した。あえて隠そうとすることで「偽データ」を我々に本物の「極秘データ」だと思わせた。
「だから黒沼はゲームショップの裏口の鍵を開けておいたのか!事務室のパソコンを調べさせて、偽データを発見させるために!」
カギヤに続いて発言したのは、ゲームショップの店内に一緒にいた氷動だった。
「ですが事務室の入り口にも、鍵が取り付けられていましたよね?」
「事務室の方の鍵は、たいして専門知識のいらない簡単なタイプだったんだ」
記憶をたどりながらカギヤが悔しそうに言う。
「あっさり解錠出来たから覚えてる。店内用の鍵だから、外部に付けられた裏口の鍵よりは厳重なものじゃなくても当然だって、僕は思ってしまったんだ」
「偽データそのものは、証拠には……なりませんね」
氷動が途中まで言いかけて撤回した。
わざわざここまで準備した偽データである。
彼らにとって本当に不利になる内容など、含まれているはずがない。
偽データを突き付けたところで「警察がでっちあげた、事実無根の言いがかりだ!」と逆に被害者として騒ぐつもりなのだろう。
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