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偶然を装ってD港の倉庫に踏み込んだ捜査員たちが爆発で吹き飛ばされても、警察は事実を世間に公表することはできず、事故として泣き寝入りするしかなかった。
今回の爆発事件は「これ以上、俺に手を出すな」という、黒沼から警察に対する不敵な警告だったのだ。
カギヤと氷動の会話を聞いていたアザミが、ゆったりとした声で呟いた。
「黒沼の屋多野組若頭補佐ってぇ肩書きは、伊達じゃなかったわけだな」
そして腕組みをして目を瞑り、椅子に深くもたれかかった。
「まぁ黒沼は、ハニートラップを仕掛けた俺をホテルに引っ張り込もうとしたほどの男だ。これくらいのことはやってもおかしくねぇ」
茶色いレンガのショッピングモールでアザミが言っていた「善悪関わらず、人並み以上に能力を持っている男が反応する」という言葉を氷動は思い出した。
「でもなぁ……ここまで班員たちを可愛がられたからにゃ、利息付けて御礼をしねぇとなぁ」
再び開かれたその目は、獲物を見つけた喜びに満ちているように氷動には見えた。
アザミが椅子から立ちあがるとマリネもそれに続き、そしてカギヤと氷動もベッドから降りて姿勢を正した。
「偽データではあったが、拳銃も一丁押さえた。それにここまでやるってことは屋多野組は武器輸入に無関係じゃねぇって自白したようなもんだ。つまり手ごたえがあったんだ」
アザミが低く穏やかな声で、班員たちに語りかける。
「カギヤと氷動の調査も、マリネの発見もムダじゃなかったってことさ」
そう言いながら一人一人の顔を見まわした。
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