【02】最悪な顔合わせ

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「レンズに度は入れずに、伊達眼鏡として使用したいのです。できるだけ頑丈なものが良いのですが」 「そ……そうでしたか。では、お客様は顔立ちがハッキリされているので、このようなタイプの眼鏡がお似合いになられるかと」  一瞬、残念そうな表情が浮かんだが即座に営業スマイル以上の笑顔となって、自分好みの眼鏡青年を完成させるべく、彼女は商品を厳選し始めた。  絶対いつもの対応とは違うであろう大人数の女性店員に見送られ、眼鏡店を出た氷動であったが、早速その効果を知りたくなり、しばらく眼鏡をかけて街を歩いてみる。  これからは、もういちいち声をかけられたり、写真を撮られたりする(わずら)わしさもなくなるだろうと思うと足取りも軽い。  しかし相変わらず女性たちの熱い視線は、惜しげもなく氷動に降り注がれた。 「なぜだ?」と、氷動がショーウインドーに映った顔を改めて見る。  そして自分ではあまり鏡を見もせずに、勧められた眼鏡に決めてしまったことを後悔した。  そこには、あの店員がプロの目と自分の好みで真剣に選び抜いた「素晴らしく眼鏡の似合った氷動」が完成していたのだ。  伊達眼鏡をかけた氷動は、別のタイプのイケメンになっただけであった。
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