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続けて氷動が、撮影された外箱の側面部を指す。
「この部分に傷は付いていませんでした」
それはテープを剥がした時に出来た傷らしく、外箱の表面に印刷された赤い色がほんの少しだけ削れており、段ボールの地が見えていた。
「氷動君、そんな小さなことよく覚えていたね!傷が増えることはあっても、突然消えることはあり得ない。君が言うように別物と考えるのが自然だね!」
カギヤは驚きの声を上げると、その写真をホワイトボードにマグネットで留め、文字を書き足していく。
「つまり、事務室のパソコンに本物の『極秘データ』は最初から入っていなかった。もしかしたら店内に飾っていた、この箱の中に隠していたのかも……」
「なるほど。品切れ中と書いて高い場所に置いておけば、わざわざ手を伸ばす者もいないでしょうし。この箱が、人目の多さを利用した『金庫』だったという可能性は大きいですね」
氷動は「大切なものを店内に置いておけば、屋多野組の関係者である店員たちも外箱を直接監視できただろう」という考えから、カギヤの推測に同意した。
「この大きさならノートパソコンっスよ。いざという時に丸ごと持ち運べる『極秘データ』専用のパソコンが、箱の中に入ってたんじゃないスか?」
マリネがやって来て、会話に加わった。
「ですが、こんな大きな箱を持って店から出たら目立ちますよね?」
と、写真を見つめていた氷動が、首を軽く横に振る。
「そうだね。確かに逃走直後の店員たちの持ち物を調べた際には、何も発見されなかったって……」
そこまで言いかけたカギヤは、ハッとした表情になった。
「……客。店員たちが逃亡する前、店から追い出した客の中に共犯者がいたとしたら?」
その言葉を聞いたマリネが頷いた。
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