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「……おっと!オヤジが戻ってきたことに気付かなかったぜ!お疲れさまです」
運転席から缶コーヒーを手渡したのは、アザミであった。
片岡はアザミをじろりとにらみながら受け取ると、今ノワールで見てきたことを話した。
「品揃えはそれほどでもない。店で儲けようという気は、まったく感じられなかったな」
「つまり建物そのものが高級質店のふりをした『極秘データ』の金庫ってわけか」
「ああ。現金や高級品を扱っているように見せれば、警備員の格好をした黒沼の舎弟がうろついていても周囲から怪しいとは思われんしな」
にんまり笑ってアザミが片岡に言った。
「オヤジ、潜入担当で『アザミ班』に入れよ」
「断る。お前の下でだけは絶対に働きたくない」
片岡は地味に即答した。
屋多野組の中でも切れ者と言われる黒沼が責任者となり、武器密輸組織「鳳仙花」と共に慎重に進めてきた「日本における新規武器輸入ルートの開拓計画」。
これは屋多野組が期待する、今後の太い資金源であった。
現在、黒沼派の舎弟は五名。
そして「極秘データ」を守るために、黒沼を含めた六名がノワールの二階と三階に住みこんでいる。
黒沼はシフトを組み、時間帯ごとに休憩する者と警備する者を分けて24時間体制で警戒させていた。
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