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夜間の利用者がいないことを前提に設置されたのか、この地域の車道に沿って並ぶ街灯の間隔はとても離れており、それらが照らす狭い範囲以外は闇が広がっている。
怪しい奴どころか車も人も通らない静かな夜より、多くのトラックが行き交ったり周りの風景が見える昼間の方が、気は抜けないが退屈せずにすむだろう。
時間をもてあました瀬田は、将来の自分の姿を妄想し始めた。
あと少しだけ今の状況を耐えて乗り切れば、黒沼さんが「鳳仙花」との商売を軌道に乗せてくれる。
そうすれば俺も黒沼派の一人として、屋多野組の中での株が上がって、金回りも良くなるだろう。
いい女も選び放題さ!
そんな瀬田が正面入り口へ戻ると、珍しく乗用車が一台こちらへ向かってくるのが見えた。
瀬田は驚いた。
てっきりその黒い車は通りすぎるだろうと思っていたのに、ノワールの前にさしかかると静かに停車したのだ。
瀬田の目の前で助手席側の窓が下ろされる。
男だ。
いきなり撃ってくるかも知れない。
瀬田は緊張した。
だが待てよ、もしかしたら道を訪ねたいだけの一般人かも知れない。
コイツを下手に威嚇して、この店が警察に目を付けられたら大変だ。
落ち着いて対処しねぇと……!
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