【18】小さな棘

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 本物の防犯カメラと、黒沼の部屋の金庫に入れられた物。  きっと、その二つが「極秘データ」のある場所を示してくれるだろう。  氷動もカギヤも同じ考えであった。  アザミの手紙を受け取った瀬田が慌てて階段を駆け上っていった足音の長さから察すると、黒沼の部屋は事前に調査した通り三階に違いない。  二人は音を立てないように細心の注意を払いつつ、階段を上がって進んだ。  高級質店ノワールには、屋多野組(やたのぐみ)若頭補佐の黒沼と、黒沼派である舎弟の五名、合計六名の男たちが住んでいる。  アザミ班は調査の一環として、この六名の監視も続けていた。  それぞれが出かける時間、ノワールにいる時間、警備員として外に立つ時間、建物の各窓から確認出来た人物など、徹底的に調査済みである。  アザミの手紙に誘われた黒沼は警備服を着たままの瀬田を従えて車で店を出て行ったので、現在ノワールに残っているのは四名のようだ。  氷動とカギヤは、二階に到着した。  マリネが入手した間取り図で確認した通り、階段のすぐ右には物置のドア、左には手前からユニットバス、給湯室、部屋のドアが二つ、廊下沿いに並んでいる。  薄暗い廊下の突き当りの天井付近に、小さな赤いランプが見えた。  片岡からの情報であるノワールの一階で使用しているダミーの監視カメラと同じ型だと確認した二人が、すばやく物置のドアに近づく。
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