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物置の中に人の気配はなさそうだった。
相手は黒沼だ。
警備が手薄に見える所に、あえて重要なものを置いている可能性もある。
二人は三階に行く前に、ここも念のため調べていくことにした。
カギヤがポケットから細い鉄の棒のような道具を取り出して鍵穴に入れて動かすと、カチッと小さな音がしてあっさりと物置のドアの鍵が開いた。
ガチャッ!
その時、大きな音を立てて他の部屋のドアが開き、氷動とカギヤは、とっさに物置の中に入って隠れた。
「今日は座ってられると思ったのに、瀬田の代わりに外かよ。あ~あ、黒沼さんばっかりお楽しみかぁ……さくっと簡単に偉くなれる方法とかないかな」
若い男の声は眠そうに呟くと、廊下を歩いて階段を下りていったようだ。
物置の下は少し隙間が開いていたので、氷動たちはその不満と足音を聞くことが出来た。
確か今ドアが開いた部屋は、舎弟の瀬田と山下が使用しているはずだ。
しかし瀬田は黒沼のお供で不在のため、今の若者は片岡が店を偵察した際、退屈そうに店番をしていたという山下だろうと物置の中の二人は推測した。
山下たちの隣の部屋にも二名の舎弟がいるが、交代時間までは就寝中のはずだ。
氷動は「黒沼がお楽しみ」という言葉を聞いた瞬間、チクリと胸に小さな棘が刺さったような感覚を覚えていた。
黒沼をホテルAに呼び出したアザミ班長は、やはり抱かれるのだろうか。
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