1489人が本棚に入れています
本棚に追加
もしそうだとしても、それは作戦上、黒沼を足止めさせるための手段としてだ。
一班員である自分が上官にどうこう言えることじゃない。
そう頭では分かっていても、黒沼の名前や淫らな言葉を口にしながら激しく抱かれているアザミの姿など考えたくはなかった。
するとモグリ病院から氷動が逃亡した際、追いかけて来たアザミの言葉が浮かんだ。
「オメェが病院のベッドに戻る前に、そっちのベッドに、ちょいと寄っていかねぇか?」
いたずらっぽく自分をホテルに誘ったアザミの表情と声が浮かぶと、フェロモンの影響がないにも関わらず体温の上昇を感じてしまい、氷動は戸惑った。
あの時すでに手柄の一つでも立てていたら、自分は誘いを断らなかったのだろうか……。
しかし、さらに続けて他の言葉まで思い出してしまった。
「ちょうど今ぐらいの時間、あの建物の通路で屋多野組の黒沼とお楽しみしてたんだぜ、俺」
「途中でやめなきゃならなかったのが、残念でもあったけどな」
氷動は急速に冷静な状態に引き戻され、無表情になってしまっていた。
アザミ班長の場合、任務だからやむをえずという感じでもなさそうか……。
その点に関しては氷動も片岡が最初に言っていた通り、アザミは「遊び人」だと思っている。
最初のコメントを投稿しよう!