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なるほど、班の中で恋愛絡みのごたごたに巻き込まれるなんて冗談じゃない。
任務に支障が出るから、伊達眼鏡で顔を隠せというわけか。
氷動は以前テレビで深夜に放送されていた海外の映画を思い出した。
巨乳の美人上司がデスクに腰かけて、ミニスカートから伸びる美脚を真面目な部下に絡ませ、そのまま関係を迫るという場面があったのだが、あんな感じだろうか。
その美貌が頻繁に女性たちから注目されてしまうということも一因となり、随分以前に氷動の恋愛感情は失せてしまっていた。
しかし自分の上官となる「アザミ」はどんな女性なのだろうかと考えると、珍しく気持ちが高揚する。
こんな物騒な班の、しかも班長とくればマトモじゃなくても驚きはしない。
むしろそっちの方が個人的にはそそられるかもな。
氷動の心の中の鎖がジャラリと鳴った。
片岡から「96」の存在を初めて聞かされた日から、一週間がたっていた。
午後1時30分。
グレーのスーツを着た氷動は、伊達眼鏡をかけてアパートの自室を出た。
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