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しかし、強い能力を持つ男たちを興奮させるフェロモンや見た目だけでは、これほど他人を惹きつける人物にはなれないだろうとも感じていた。
呆れるようなくだらない言動をしたかと思うと、
「俺の班に死にたがってる奴なんて誰もいねぇし、死なせるつもりもねぇ」
と、班員たちを力強く見守ってくれている。
子供の頃から独りで何度も見てきた夜明けの海も、アザミと一緒に見た時は今まで以上に美しく、優しく包まれているような温かい気持ちにもなった。
あの光景は、きっと一生忘れられないだろう。
そういえば氷動は、まだ自分が「班長である時以外の麻実」について何も知らないことに気付いた。
いつかアザミ班長から「96」の一員としての実力を認められたら、自分が過去の話を聞いてもらったように、班長自身のことを自分に話してもらえる日が来るのだろうか……。
そのためにも今は作戦を完遂させることだけを考えようと、氷動は改めて集中することにした。
二階の物置に窓はなく天井には蛍光灯があるが、念のため二人は室内は暗くしたままマリネが改造した手持ちライトを使用することにした。
周囲にたいして店がないことから頻繁に買い物に出なくても済むように、壁際のスチール棚には様々な生活用品がまとめて置かれ、缶ビールやペットボトル飲料なども箱買いしているようだ。
カギヤが氷動に囁いた。
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