【19】死闘と愛撫

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 ソファに倒れ込んだ氷動が、よろけながらもすぐに立ちあがって体勢を戻す。  覆面の下で口の端が切れたようだ。 「こんな狭い場所だと、本気も出せやしねぇや」  余裕たっぷりの西沢は、太い首を左右に振ってゴキゴキと鳴らした。  実は氷動が「二階で監視カメラの電源を切って三階へ向かおう」と判断をしたのには、彼なりの考えがあったのだ。  西沢は周りの舎弟と比べると群を抜いて強く、黒沼から一番信頼されているという現状を誇りに思っている男らしい。  それならばきっと自分たちの存在に気付いたとしても「賊を建物内に侵入させてしまった」と彼のプライドが許さず、仲間には黙って一人で片付けようとするはずだ、と。  つまり監視カメラの異変に気付かれた場合、三階にいる西沢一人だけをどうにかすればいいのではと氷動は判断し、賭けてみたのである。  その賭けは当たった。  しかし思っていた以上に西沢は強かった。  拳も蹴りもある空手の技が猛スピードで繰り出されるというだけではなく、ガードした上から大きなダメージを与えるほどの破壊力を持っているのだ。  必死に攻撃をかわしつつ(みずか)らも攻撃していた氷動だが、西沢のタフな体にはあまり効いているようには思えない。
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