【02】最悪な顔合わせ

6/10

1482人が本棚に入れています
本棚に追加
/244ページ
 昼休みを終えた社員たちが職場に戻り、学校帰りの子供たちの姿を見るにはまだ早い。  昼間であるにも関わらず、この辺りでは人の姿がぐっと少なくなる時間帯だ。  10分ほど歩き、ある寺の前を通り過ぎようとした時、地味な緑色のタクシーが通りかかった。    手を挙げて止めると、後部座席には先客がいた。    しかしタクシーの後部座席のドアは開けられ、氷動もすばやく乗り込む。  すると先客が、世間話をするような口調で話しかけてきた。 「時間通りだな。ん?伊達眼鏡、あまり役に立たなかったか」 「申し訳ありません」 「まぁ、ないよりはマシか。似合っているぞ」 「ありがとうございます」  片岡から連絡を受けた氷動が、指示通りの方法で彼に合流したのである。 「今から君をアザミ班長へ紹介する」  タクシー内でその話題を出して良いのだろうかと、氷動が思ったのを感じとったのか、 「運転しているのは私の部下。このタクシーは私の専用車の一つだ」  と、前置きしてから片岡は改めて説明を続けた。
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1482人が本棚に入れています
本棚に追加