1482人が本棚に入れています
本棚に追加
/244ページ
昼休みを終えた社員たちが職場に戻り、学校帰りの子供たちの姿を見るにはまだ早い。
昼間であるにも関わらず、この辺りでは人の姿がぐっと少なくなる時間帯だ。
10分ほど歩き、ある寺の前を通り過ぎようとした時、地味な緑色のタクシーが通りかかった。
手を挙げて止めると、後部座席には先客がいた。
しかしタクシーの後部座席のドアは開けられ、氷動もすばやく乗り込む。
すると先客が、世間話をするような口調で話しかけてきた。
「時間通りだな。ん?伊達眼鏡、あまり役に立たなかったか」
「申し訳ありません」
「まぁ、ないよりはマシか。似合っているぞ」
「ありがとうございます」
片岡から連絡を受けた氷動が、指示通りの方法で彼に合流したのである。
「今から君をアザミ班長へ紹介する」
タクシー内でその話題を出して良いのだろうかと、氷動が思ったのを感じとったのか、
「運転しているのは私の部下。このタクシーは私の専用車の一つだ」
と、前置きしてから片岡は改めて説明を続けた。
最初のコメントを投稿しよう!