【19】死闘と愛撫

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「そういやぁアイツ初顔合わせの時、俺ほどじゃないが経験あるって言ってたよな」  あの綺麗な顔と指で、相手をどんな風に愛撫するのだろうか。  いつの間にかアザミは無意識にズボンの前を開けて、下着の中に右手を滑り込ませていた。  氷動のことを考えている間に、ゆるく()ちあがり始めていたものを軽く握り込み、彼の触れ方を想像しながら指を這わせていく。 「んっ……ふうっ……」  次第に息が乱れてくる。  アザミは絶望して「96」から逃亡を図った氷動と共に夜を明かした茶色いレンガのショッピングモールでの出来事を、一つずつ思い出していた。 「いつも独りで見ていた景色です。誰かと一緒に見たのは初めてなんです」  なにも見えなかった闇が輝く海へと変わりゆく光景を二人で見た時、氷動の言葉から嬉しそうな感情が初めて伝わってきた。  あの時に俺が言った、 「宝物を分けてもらった気分だ」  というのは、大袈裟(おおげさ)な例えじゃない。  俺もアイツが大切にしてきた景色を一緒に見ることができたことが、素直に嬉しかったんだ。 「まだ、班長を口説(くど)けるほどの男ではないと思っています。今は一刻も早く任務に復帰出来るよう回復に努めます」  強い意志を感じさせる声と、朝日に照らされた美しくも凛々(りり)しく生まれ変わった顔。
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