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「んあぁっ……氷動……っ!」
思わず上げてしまった己の嬌声を聞いて、アザミは我に返った。
「……」
静まり返った部屋には、乱れた呼吸だけが残された。
アザミが今から抱かれるのは氷動ではなく、一番の敵である屋多野組の若頭補佐、黒沼なのだ。
氷動とカギヤの潜入時間を増やすためにも、自分は黒沼にできるだけ長く抱かれて足止めをしなければならない。
「別に……いつものことじゃねぇか」
フェロモンを纏った肉体を活かして任務をこなしながら、今まで自分自身も散々楽しんできた。
それに黒沼がアザミに魅力を感じなければ、氷動たちの身が危なくなる。
「さて、気合いを入れてお仕事、お仕事」
おどけたように呟きながらも、アザミは珍しく気乗りがしなかった。
黒沼が相手だからか?
いや、茶色いレンガのショッピングモールで黒沼にハニートラップを仕掛けた時の俺は、あの状況を楽しみながら任務に当たっていた。
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