1489人が本棚に入れています
本棚に追加
……嘘だろ、まさか俺は……氷動のことを……
そう思いかけて、アザミは軽く目を瞑ると首を横に振った。
もう「無駄なこと」は考えないと決めたじゃねぇか。
もし氷動がアザミに欲情したとしても、それは愛でも恋でもない。
フェロモンによる、ただの反応だ。
アザミと作戦決行日まで行動を共にしてきたことで、他の班員と同様に氷動もフェロモンには慣れたようだ。
万が一、興奮してしまった時の対処法も教えてある。
性質の悪い悪党であるほど溺れさせることの出来るフェロモンは、敵の強さを測る測定器としても、ハニートラップとしても大いに役立ってきた。
この能力を活かすために、自分の魅せ方も、演技も、話術も、肉体そのものも徹底的に磨きをかけてきた。
この特殊なフェロモンは、アンダーグラウンドで暗躍するアザミにとって必要不可欠な「武器」でもある。
だから現在まで「どうせ消せない能力なら、自分自身が楽しく利用してやろう」と、考え方を切り替えて生きていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!