【19】死闘と愛撫

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 ……嘘だろ、まさか俺は……氷動のことを……  そう思いかけて、アザミは軽く目を瞑ると首を横に振った。  もう「無駄なこと」は考えないと決めたじゃねぇか。  もし氷動がアザミに欲情したとしても、それは愛でも恋でもない。  フェロモンによる、ただの反応だ。  アザミと作戦決行日まで行動を共にしてきたことで、他の班員と同様に氷動もフェロモンには慣れたようだ。  万が一、興奮してしまった時の対処法も教えてある。  性質(たち)の悪い悪党であるほど溺れさせることの出来るフェロモンは、敵の強さを測る測定器としても、ハニートラップとしても大いに役立ってきた。  この能力を活かすために、自分の魅せ方も、演技も、話術も、肉体そのものも徹底的に磨きをかけてきた。  この特殊なフェロモンは、アンダーグラウンドで暗躍するアザミにとって必要不可欠な「武器」でもある。  だから現在まで「どうせ消せない能力なら、自分自身が楽しく利用してやろう」と、考え方を切り替えて生きていたのだ。
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