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【20】闇の96(前編)
アザミが黒沼を受け入れるための準備をし終えた時、室内の電話が鳴った。
客室用として置かれている電話の受話器を取ると、フロントが「お連れ様からお電話です」と言うので繋いでもらう。
「おう、俺だ。分かるか?」
黒沼の声を聞いた時には、さすがにアザミの頭も任務用に切り替わっていた。
「んんっ……兄さ……ん?」
荒く乱れた呼吸と共に、かすれた妖艶な声でアザミが答える。
黒沼はあまりの色気にゾクリとしつつ慎重に聞いた。
「おい、どうした?まさかあの変態野郎が、追いかけてきたのか?」
すると怯えているというより、恥ずかしそうな声が小さく返ってきた。
「……ごめん……兄さんのこと考えてたら……たまらなくなって思わず」
自分で弄ってた最中だったのか、と思わずゴクリと唾を飲みこむ。
「……我慢出来ねぇなんて悪い子だ。あとでたっぷりお仕置きしてやるからな?」
そう言いながらも、限界なのは黒沼の方だった。
そんなに早く俺に会いたいなら、もっと近くのホテルにすれば良かったのに。
きっとノワールから25分も離れたホテルAに宿泊したのは、アイツと俺の関係を警察官である元交際相手に気づかれないように、との配慮からだろう。
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