【20】闇の96(前編)

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 氷動はカギヤの手元を照らしながら、今までを振り返っていた。  警察が時間をかけて存在場所を突き止めたにも関わらず、まんまとゲームショップから持ち出されてしまった「極秘データ」。  自分たちが怪我をしてまでつかまされたのは、黒沼が仕掛けていた偽データの罠だった。  その後、アザミ班長のハニートラップで「極秘データ」の新たな管理場所として浮上した高級質店ノワール。  そこから「96・アザミ班」は片岡警視長も交えて、徹底的に黒沼派と店の周辺を調べ尽くした。  警備をしていた瀬田をアザミ班長の手紙で慌てさせて隙を作り、カギヤさんと店内に潜入。  監視カメラを停止させ、黒沼の部屋の金庫から非常ベルを鳴らさないために必要な専用キーを奪った。  しかし「極秘データ」は、そのキーが使用できる階段近くの物置の中には隠されていなかったのだ。  最後の希望は、西沢が黒沼から預かったと思われるもう一つの専用キー……長い道のりではあったが、この広めの物置の方に必ず「極秘データ」があると信じたい。  ガチャリと、大きな金属音がした。  非常ベルを鳴らすことなく、カギヤが解錠に成功したようだ。  物置に窓がないことを間取り図で知っていたので、一気に片を付けるべく氷動は迷わず室内の電気を点けた。  広い部屋の左右の壁にはスチール棚が三つずつ置かれ、ファイルボックスや段ボールが隙間なく並べられている。
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