【20】闇の96(前編)

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 そして部屋の中央には、幅の広い木目調のオフィス用デスクと革張りの事務椅子があり、卓上には固定電話とデスクスタンド、蓋を閉じたノートパソコンが置かれていたのだ。 「ノートパソコン……ありましたね」 「うん。黒沼は、この部屋で武器密輸組織『鳳仙花(ほうせんか)』と連絡を取り合ったり、情報を管理しているんだろうね。時間がない、急ごう!」  カギヤが「スーパー大食いちゃん」を取り出し、電源を入れようとノートパソコンに手をかけたところで動きを止めた。 「どうしたんですか?」 「……君は右の壁の棚を大至急調べて。僕は左の棚を調べるから」 「はい」  氷動はノートパソコンを目の前にして、なぜカギヤがそんなことを言うのか分からなかったが、彼を信じてすぐ行動に移った。  捜査二課時代の数々のガサ入れ経験が身に染みついているカギヤは、棚に置かれた多数の箱の中身を手際よく調べ終え、すぐさま氷動が調べている反対側の棚を一緒に手伝い始める。 「……っ!」  息を飲んだ氷動が、青いファイルボックスをカギヤの前に差し出した。  その中には別のノートパソコンが隠されていたのだ。  それを見たカギヤが(うなず)いた。 「この隠し方、こっちが本物だと思う」
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