【20】闇の96(前編)

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「だったら、自分が」 「大丈夫。これ軽いから、予定通りの役割分担で行こう」 「了解」  カギヤは氷動に背中を向けると、背負っていた薄型のリュックサックにノートパソコンを入れてもらった。  そして物置を出る瞬間、腕時計のスイッチを二人が同時に押すと、デジタルの文字盤がカウントダウンの表示に切り替わった。 「貴様ぁらああぁっ!」  地鳴りのような野太い絶叫が、三階の廊下に響き渡った。  黒沼の部屋の壊されかけているドアの隙間から見えたものすごい形相で騒いでいる西沢を横目に、氷動とカギヤは廊下を一気に駆け抜けて行く。  階段を下ろうとした時、二階で眠っていた二人の舎弟が眠そうな声で会話しながら上がってきたのが見えた。 「ったく、なんの騒ぎだよ。三階で爆音上映会でもやってんのか……おい!」  ようやく侵入者に気付いて階段の途中で足を止めた二人に対し、彼らよりも高い位置にいた氷動は、ためらうことなくその場からジャンプし容赦のない飛び蹴りを喰らわせた。 「ぐぎゃっ!」 「ぶおっ!」
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