【20】闇の96(前編)

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 折り重なるように氷動の着地点となってしまった舎弟たちの上を、素早くカギヤも飛び越えると二人は急いで階段を駆け下りる。  その頃ノワールの外では、急遽、黒沼の車を運転することになった瀬田に代わり、山下がスマホをいじりながら店の正面で警備に当たっていた。  彼はゲームに夢中になっていたのだが、ハイスコアをあと一歩のところで逃し、集中力が切れたことでようやく周囲の異変に気が付いた。  建物の中が何か騒がしくないか?  黒沼さんがいないから、残ったメンバーで宴会でもしてるんだな、きっと。  店舗にある二ヶ所の出入り口は鍵もかかっているし、建物内には強い西沢もいる。  まさか侵入者がいるとは想像もできない山下は、 「なんだよ、俺ばっかり外で警備してるとか不公平じゃねぇ?だったら俺も休憩していいよな」  と、駐車スペース出入り口側からスマホを見ながらノロノロと歩いて裏手に回り、従業員専用口の解錠を始めた。  その瞬間、すごい勢いで開けられたドアが山下を突き飛ばしたため、派手に尻もちを着いてしまった。  山下の手から落ちたスマホが、カラカラとアスファルトの上で回転している。 「痛ってぇ!なんだよ!危ねぇな!壊れたらどうすんだよ!」  自分のことよりスマホの心配をしている山下に、階段で氷動に飛び蹴りを喰らった二人組が詰め寄った。
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