【20】闇の96(前編)

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「今、出てきただろ!侵入者だ!どこだ!どっち行った!」 「はあぁ?侵入者ぁ?やっぱり酔っぱらってんじゃないですか!俺にも声かけてくれたって……」  すると高音で力強い排気音が響き渡った。 「なんの音だ!」 「駐輪スペースの方だ!行くぞ!」  と、走りかけた三人の前に突然現れたオフロードバイクが、ライトで彼らの目を眩ませて、さらに突進してきたのだ。 「うわあああっ!」  とっさに転がって避けた舎弟たちには目もくれず、バイクは駐車スペースの出口から道路へ走って出て行く。  背中には黒いリュックサックを背負っているようだ。  あまりの急な展開に、山下は呆然となってしまった。 「な……なに?アイツ?」 「だから侵入者っつってんだろうが!」 「山下ぁっ!テメェちゃんと警備してなかったんだろ!」 「しっ……してましたよ!ちゃんと!それに店ん中には、西沢さんが……って、西沢さんは、どうしたんですか?」  三人は大騒ぎしながら、ノワールを離れて追いかけていいものかと判断できずに迷っていると、口の周りを血まみれにした西沢が従業員専用口から飛び出してきた。
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