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振り返った氷動の耳に息がかかるほど寄せられた男の厚い唇から、艶を含んだ声が低く響いた。
「アンタ随分と綺麗な顔してるねぇ?ここはモデルのオーディション会場じゃねぇんだぜ?」
早速、新人いじめか?氷動は無表情のまま男をまっすぐ見た。
「手を離していただけませんか?」
男は腕をつかんだまま、楽し気な表情で氷動の反応を見ている。
もしや、この男の手を振り払えるかどうかという、最初の試験なのだろうか?
だったら遠慮はしない。
氷動が心を決めて男の手を振り払おうとした瞬間、ふと気付いた。
自分の体中から汗が吹き出している。
この男への恐怖心や緊張感を原因とした汗ではない。
なんだ、この部屋の温度は……暑さが異常だろ?
しかし部屋の奥のソファには、片岡が平然と座っているのが見える。
「96」のメンバーになったら、極端な暑さや寒さにも慣れろということなのか?
いや、違う!部屋が暑いんじゃない!自分の体が熱いんだ……!
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