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二人組は車体で路地を塞いで、チャンスを待った。
バイクがスピードを落とすことはなく、正面の塀に激突すると思われた。
しかし次の瞬間、氷動はバイクの前輪を持ちあげて塀に勢いよく叩きつけると、逆立ちするように後輪を上げて前輪を軸に半円を描き、塀の反対側に着地したのだ。
「…………見たか?」
「……ああ、アクション映画の撮影か……?」
目の前で起こった光景が信じらない二人組は、工場の敷地を抜けていく氷動のテールランプをただ呆然と見送るしかなかった。
しかしハッと我に返ると、もう一台の車で西沢と共に追跡中の山下のスマホに慌てて連絡を入れた。
「うっそ!他の追跡チーム、侵入野郎のバイクを見失ったそうです!」
スマホ画面を見ながら後部座席の山下が、ハンドルが取れるのではと心配になるほど荒々しく運転している西沢に報告する。
山下が助手席に座ると運転席の西沢から周囲が見えづらいということで、後ろに座らせられているのだ。
「ちっ!」
目を血走らせた西沢が舌打ちをする。
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