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「バイクが逃げる時に低い塀の工場を飛び越えたらしいんですけど、それって多分このあたり……あっ!」
報告の途中で山下が叫んだ。
「西沢さん!あそこにバイクが!」
そう言って、山下が窓を叩いた方を西沢が見ると、車両通行止めの標識が立てられた狭い道路にバイクが進入して行くのが見えた。
「ありゃ普通のバイクじゃねぇな!あの野郎に間違いねぇ!」
西沢は叫ぶと自分も車両通行止めの標識を無視して、非常に狭い道路に強引に車で進入した。
道路を挟む工場の壁にガリガリ酷い音を立てて車の両側面を削りながら、派手に火花を散らしてバイクを追いかける。
「あ!この先は確か、急な下りの階段になっていたと思います!」
と、自分たちの現在地を把握した山下が助言した。
「階段だろうが関係ねぇ!ぶつけてやる!」
西沢はスピードを上げる。
狭い道路の正面には、建物の灯りなどは一切見えずに闇が広がっていた。
山下が言う通り、現在地よりもこの先は急に土地が低くなっており、その高低差を階段で繋いでいるのだ。
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