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どうにか難を逃れた山下が、無言で西沢が指さした資材置き場を見下ろすと、暗闇の中にうっすら浮かぶコンクリートの塀の上にバイクが着地していたのだ。
少しでも着地点がずれていたら塀にぶつかりバイクは大破していただろうし、運転者の命もなかったかも知れない。
しかし闇の中のバイクは、タイヤとほとんど同じ幅しかない塀の上を憶することもなく道路を走行しているようなスピードで走り出した。
そして塀が途切れるとジャンプして道路に着地し、そのまま走り去って行ってしまった。
「あの野郎……完全にイカレてやがる……」
本当に強い者は、対峙した相手の強さも分かるという。
強者を数多く見てきた西沢は「闇の中での勝負は、俺たちに勝ち目はない」と、敗北を認めた。
その横で後部座席から助手席へ身を乗り出していた山下が、
「しまった……動画で撮れば儲かったのに……」
と、スマホ片手に悔しそうに呟いた。
西沢たちから逃れた後、氷動は灯りのない狭い路地に入った。
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