【02】最悪な顔合わせ

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 氷動が急激な体温の変化を自覚した瞬間、めまいと激しい吐き気が襲ってきた。 「くそっ……!」  ビジネスホテルの部屋の作りは、大抵似たようなものである。  男の手を強引に引きはがした氷動は、自分のすぐ後ろにあったドアを開けた。  予想通り、そこはユニットバスだった。  氷動はトイレの蓋と便座を上げてしゃがみこみ、ドアを閉める余裕もなく吐いた。  男は腕を組んで、にやにやと眺めていた。 「とっさに床を汚さない、つまり自分がここに存在した証拠を、極力残さないようにしたのか。なかなかやるじゃねぇか、兄ちゃん」  それからようやく落ち着いた氷動に向かって、 「洗面台とタオルも使っていいぞ。俺が許す」  と言うと、男は片岡のいるソファに向かって歩いていった。  ふざけやがって……テメェが何か仕掛けたくせに……!    誰にも見えはしなかったが、珍しく氷動の顏は怒りにゆがみ、両手は血が滲みそうなくらい固く便器の縁でそれぞれ拳を握っている。  しかしここで短気を起こせば、片岡の顔に泥を塗ることになる。  そう思ってヒドウは自分の置かれた状況がはっきりするまでは、こらえることにした。
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