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川と並行して長く延びる車道は、進行方向へ向かって下り勾配になっている。
川への転落を防ぐために、道路と土手の境目には反射板が上部に付けられたガードレールが一定間隔で設置はされているが、街灯がないためかなり暗く視界が悪い。
明るい時間帯ならまだしも夜間の歩行者の利用は、まずないだろう。
今は車の姿もなく静まり返っており、ザァザァと川の流れる音だけが聞こえている。
ようやく氷動はバイクを停止させ、腕時計を見ると、カギヤと合わせて開始させたカウントダウンはゼロになっていた。
カギヤを逃走させるために、氷動がおとりになる時間が終了したという意味だ。
彼が無事に逃げ切れたかどうかは帰還するまで分からないが、信じるしかない。
少なくとも氷動は黒沼派の追手をバイクで引きつけながら逃げ切り、自分の任務をやり遂げたのだ。
終わった。
安心した途端、氷動は全身にひどく汗をかいていたことに初めて気が付いた。
随分と集中していたんだなと思いながら、再びバイクをスタートさせようとした、まさにその時、
キキキキキ……!
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