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黒沼の車と氷動のバイクが逆走している上り勾配の先は、道路が二股に分かれていた。
左急カーブと、勾配のない直線の道路である。
ただし、直線の道路への入り口付近には、高さが1メートルを超える大きな車両止めの鉄柵が設置されていた。
本来決められた方向に道路を走行していれば、この鉄柵の設置場所は特に影響があるものではない。
黒沼は、車のライトが照らし出している闇の中のバイクに全神経を集中させていたため、逆走している道路の形状が、この先どうなっているのかまでは考えていなかった。
もちろん氷動は、道路が左へ急カーブしていることも記憶している。
しかし彼のバイクは直進したまま加速して一気に勾配を上りきると、まるで闇を舞う黒馬のように見事なタイミングで大ジャンプをして鉄柵を飛び越えたのだ。
黒沼の目の前にあったバイクが一瞬で消え、その代わり動かぬ大きな鉄柵がいきなり闇から現れた。
「なっ……!うわあああああぁっ!」
ドガアァアアアッ!
凄まじい音と共に激突した黒沼の車は、クッションに当たったビリヤードの球のように角度を変えて、ガードレール同士の隙間を突き破ると土手を転がり川に落ちた。
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