【000】エピローグ

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【000】エピローグ

 某県の湖畔に佇む高級ホテルK。  荘厳な美しさを感じさせる建造物だというだけではなく、質の高いサービスと安全性が高く評価され、海外から来日したスターやセレブ、VIPなどが常宿として利用するということでも知られている。  午後10時。 「96」のメンバーとして初めて参加した作戦を完遂した氷動は「今回の成功報酬を決めたいから来て欲しい」とアザミに呼び出されていた。    氷動は伊達眼鏡をかけてはいるが、仕立ての良いスーツに身を固めて颯爽と歩く姿は、世界的に有名な建築家が手掛けたロビーを一瞬で引き立て役にするほど華を感じさせ、その場にいた男女を問わず魅了した。  直通エレベーターに乗り30階に着くと、そこはスイートルーム専用の特別フロアになっていた。    歴史ある美術館の一部と錯覚しそうなエレベーターホールを見回しながら、氷動は「オメェのお祝いだから、ビシッとキメて来いよ」とアザミが言っていた意味を理解することができた。  氷動は厚みのある真紅のカーペットを歩いて行き、指定された番号が刻印されている金のプレートがはめられた木製のドアの前で立ち止まった。  するとノックする前に、内側からドアが開かれた。
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