【000】エピローグ

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 アザミがシャンパンを注ぎながら、 「今朝、警視庁に落し物が届けられたらしいぜ。ヤバいデータが入った鞄が」  と、世間話のような口調で言うと、 「はい。自分も聞きました」  と、氷動も表情を変えずにそれに合わせる。 「ははっ、しれっとよく言うぜ」  アザミは楽し気に笑いながら、シャンパングラスを掲げた。  今朝、警視庁に黒いボストンバッグが拾得物として届けられた。  鞄にはノートパソコンと、その中に入っているデータを印刷したと思われる書類が多数入っていた。    それを届けたのは、犬を散歩させていた老人だった。 「今、そこで鞄を拾ったのだが、重要な会議の時間に間に合わなくなるため寄り道ができない。大変申し訳ないが、代わりにこれを警察に届けていただけないだろうか」  と、見知らぬ男性から丁寧な口調で頼まれ、この鞄を託されたのだと言う。
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