【000】エピローグ

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「悪ぃ、冗談だ!そう怒るなって!この件も、今日ちゃんとオメェに謝ろうと思ってたんだ」  氷動の肩をポンポンと叩いて、アザミが苦笑いをする。  アザミの予想外の言葉に、今度は氷動が驚く番だった。 「え?どうして自分に謝るんですか?」 「ん?あぁ、俺は黒沼を部屋の外で逃しちまったからな」 「え?それでは黒沼は、508号室には行かなかったんですか?」 「ん?だからオメェはこの話題を振ったんだろ?黒沼がノワール方面へ戻ってきたのが、思っていたより早すぎたって」 「え?あ、いえ、そういうわけでは……」  ちぐはぐな会話が続いた後、アザミはホテルAに到着した黒沼がフロントに伝言を預け、すごい勢いで引き返してしまったことを氷動に説明した。 「しかしそれは慎重な黒沼が連絡を入れて、店の異変に気付いたのだと考えられます。責任があるとすれば、西沢に見つかった自分の方です。班長が謝ることでは……」 「いいや、俺は黒沼をできるだけ店から遠ざけようとした。だがもう少し近いホテルを選んで早く会っていれば、アイツも店の異変には気付かなかっただろう」   アザミは、氷動に頭を下げた。 「俺の計算が甘かった。すまなかった。そんな中で本当によくやってくれたな。ありがとう」
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