【000】エピローグ

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 そして返された手帳を見たアザミは呆気(あっけ)にとられた後、笑い出した。 「おいおい、氷動。俺には『0』が一つしかねぇように見えるが?」 「却下でしょうか?」 「いや……だが、その、あれだ。今回のオメェの充分すぎる活躍を考えたら……」  氷動は美しく澄んだ力強い目で困惑しているアザミをまっすぐに見つめ、次の言葉を待っている。  シャンパンやアザミのフェロモンの影響を受けて意識がぼんやりしてしまい、書き間違えたというわけではなさそうだった。  これは彼の揺るぎのない本心であり、迷いもないということがアザミにも伝わってくる。  アザミは一呼吸置いてから氷動を見つめ返すと、穏やかな声で言った。 「……いいぜ。本当に氷動がこれで良いって言うんなら、受理しよう」 「ありがとうございます」  そう言って一礼した氷動は眼鏡をはずし、アザミを力強く抱き締めながら美しく装飾された大きなソファに押し倒した。  アザミの上に氷動が重なり深く口づけると、舌を絡め合わせて激しく口内を貪る。 「んっ……っ……んんっ……」
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