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【03】アザミ班長
「大丈夫か?」
身を整えてユニットバスから出てきた氷動に、片岡警視長が声をかける。
「失礼致しました。問題ありません」
「先程のこともあるし、君も座ったらどうだ?」
それを丁重に断り、氷動は直立不動の姿勢で片岡の右後方に立った。
まだ氷動の退職願は受理されていない。
よって警察官である以上、自分よりはるか上の階級である片岡を守る立ち位置を選んだのだ。
それと同時に、目の前でソファにふんぞり返って楽し気に座っている男から、極力距離を取りたいという気持ちも大きかった。
整えられたあごの髭をなでながら男は首をかしげた。
「もしかして俺、そこのクールビューティーなお兄さんに嫌われちゃった?」
しらじらしい。
氷動は、無表情のまま聞こえないふりをした。
ああそうだ、大嫌いだ。
さっきのアレはなんだ?
腕をつかんだ際に、人体にとって危険なツボでも押したのか?
前もってドア付近に薬でも撒いてあったのか?
アザミ班長が来るまでの場つなぎ役だとしたら、必要ない。
何時間でも勝手に待っててやるから、とっとと出ていけ!
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