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汗が首筋や背中を流れ落ち、鼓動が耳の奥でうるさい。
だが目をそらしたくとも、なぜかそらすことが出来ない。
アザミが眼鏡のツルの先を氷動の頬を流れる汗に沿わせ、たどらせていく。
そして楽し気に質問を始めた。
「もてるだろ?」
「はい」
「もちろん、経験はあるよな?」
「はい。アザミ班長ほどではないと思いますが」
氷動は熱さで意識がぼんやりするような感覚に襲われ始めていた。
しかし「この男にだけは負けたくない」という気持ちの方が圧倒的に強かったため、嫌味をこめて言ってやった。
その返答にアザミは目を丸くした。
そして大笑いした後、ソファの背から身を乗り出して片岡の顔を覗き込んだ。
「おいおい、オヤジか?このボーヤに余計な情報を吹きこんだのは」
「余計なことは言っていない。必要事項以外はな」
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