【03】アザミ班長

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 汗が首筋や背中を流れ落ち、鼓動が耳の奥でうるさい。  だが目をそらしたくとも、なぜかそらすことが出来ない。  アザミが眼鏡のツルの先を氷動の頬を流れる汗に沿()わせ、たどらせていく。  そして楽し気に質問を始めた。 「もてるだろ?」 「はい」 「もちろん、経験はあるよな?」 「はい。アザミ班長ほどではないと思いますが」  氷動は熱さで意識がぼんやりするような感覚に襲われ始めていた。  しかし「この男にだけは負けたくない」という気持ちの方が圧倒的に強かったため、嫌味をこめて言ってやった。  その返答にアザミは目を丸くした。  そして大笑いした後、ソファの背から身を乗り出して片岡の顔を覗き込んだ。 「おいおい、オヤジか?このボーヤに余計な情報を吹きこんだのは」 「余計なことは言っていない。必要事項以外はな」
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