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そして現在、夜景を見下ろすタワーマンションにある岩原の部屋で、アズミと名乗る男と二人、高級な酒を飲み始めたのだが……。
アズミと飲む酒は実に美味かった。
魅力ある低い声がセクシーな厚い唇からはっせられるのを見ているだけでもゾクゾクするのに、アズミは聞き上手でもあり、彼自身の話も非常に面白い。
岩原はこの男にどんどん魅かれていった。
こういうタイプは抱こうなんて考えたこともなかったが、これだけそそられるってことは案外食わず嫌いだったのかも知れないな……。
楽し気に話すアズミに気付かれないように、そっと酒と共に唾を飲み込む。
話の内容は雑多であったが、一番メインとなったのはギャンブルに関わる話だ。
アズミはかなりのギャンブル狂で、毎月稼いだ生活費のほとんどをつぎ込んでしまうらしい。
そんな話をアズミから聞かされた岩原は、彼と深く関わりたい気持ちを抑えられずに自分の秘密を打ち明けた。
「実はなぁ……俺はカジノの経営者なんだ」
「カジノ?海外で事業をしてるってことか?」
「いや、日本の地下さ。会社社長ってのは、世間と警察の目を欺くための仮の姿なんだ」
そう言ってニヤリと笑う。
「裏カジノ?まさか!」
「なんだ?信じないのか?」
「競馬場で他のおっさんたちと雑談した時、誰かが裏カジノで大勝したことがあるって言ってたが、デタラメだと思ってたぜ」
「そいつのは大嘘だろ。だが俺の話は本当だ。経営者なんだからな」
アズミが目に見えてそわそわし始めた。
「そっ……それじゃあさ、俺も連れて行ってくれないか?」
「もちろん連れて行ってやる」と、言いたくてたまらない気持ちをぐっとこらえて、岩原はワンクッション入れた。
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