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どちらにせよ氷動は今後「96」の班員たちに関わる際、心を許すつもりなどなかった。
「梶矢です。どうぞよろしく」
「氷動です。よろしくお願い致します」
二人はしばらく言葉を交わしていたが、梶矢が話しやすい雰囲気だということもあり、氷動は気になっていたことを素直に質問した。
「『96』は危険な任務も多いと聞いていますが、既婚者もいるんですね」
「一旦入ってしまったから、やめることが出来ないだけだ!」という返事も予想していたが、梶矢の場合は違った。
「あ!ちなみに僕は、独身だから」
「え?」
「氷動君ほどのすごい美形だったら素敵な出会いも多そうだけど、ほら、僕はそうでもないし」
そう言うと梶矢は困ったような笑顔をした。
「いえ、そんなことは。でも梶矢さん、指輪を……」
「ああコレ?アザミ班長と最初の顔合わせをした後、個人的に協力してほしいって言われてね」
梶矢の話の流れから、氷動はなんとなくいやな予感がしてきた。
「標的が既婚者だった場合、ハニートラップを仕掛けるのは気が引ける。しかし任務となればやむをえない。オマエは誠実そうな家庭人の雰囲気を持っているから、薬指に指輪をはめて俺の特訓に付き合ってくれ、って……」
やっぱりそっちの話か。
あきれた氷動が、さらに無表情になる。
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