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梶矢は、困ったような笑顔を浮かべながら続けた。
「班長の任務に対する真摯な姿勢を見せられては、断るわけにもいかなくてね」
「ちなみにどのような特訓内容だったか、質問してもよろしいでしょうか?」
「うん。アザミ班長が上司の役で、デスクに腰かけて足を部下役の僕に絡ませて、そのまま関係を迫るというシチュエーションだったよ」
氷動はカギヤの話を聞いて、すべてを察した。
そのシチュエーションは自分も以前観たことがある、テレビで深夜に放送されていた「巨乳上司に真面目な部下が迫られる」海外映画の再現なのだと。
あの映画では性的に散々煽られて誘惑に耐えきれなくなった真面目な部下が、巨乳上司をデスクに押し倒し、乱暴に胸元のボタンを外す手には光る指輪が……というような内容だった。
きっとアザミ班長も同じ映画を観たに違いない。
ちょうど真面目そうな新人が入ってきたから、自分も一般企業のオフィスを舞台としたイメージプレイで楽しみたくなっただけだろう。
なにがハニートラップの特訓だ。
第一あんなふてぶてしい男が、気なんて引けるわけがない。
氷動は上官である片岡に言われた通り、アザミの誘惑には充分注意しようと思った。
「あの時の強烈な体験から『裏社会では、今までの常識に囚われてはいけない』と学んだ初心を忘れないように、今も指輪を付けているんだよ」
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