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そう言って指輪を見せてくれた前向きな先輩に、氷動はどうしても聞きたいことがあった。
「先ほど話が出ましたが、梶矢さんがアザミ班長と初めて顔合わせをした場所はビジネスホテルでしたか?」
「いや、僕の場合は貸切のレストランだった。美味しそうな料理が並んでいたけど、ものすごく緊張していたから味が分からなかったよ」
その時のことを思い出しているのか、梶矢が困ったような笑顔になりながら続ける。
「次第に暑くなってきて空調が故障しているのかと思ったんだ。それからぞくぞくしてきて全身を汗が流れて。緊張していたのに、いつのまにか興奮しているような感覚になっていたんだよね」
自分の時と同じだと氷動は思った。
「後になって、もしかしたら料理に何か入っていたのかな、って疑ったりもしたんだけど。まさかアザミ班長が原因だったなんて驚きだよね」
どうやら困ったような笑顔は、梶矢のクセらしい。
やはり、あの不可思議な現象は、アザミの仕業だったのか。
氷動はさらに質問を重ねた。
「アザミ班長の特技は、薬物の扱いでしょうか?」
「え?氷動くんはアザミ班長について、まだ説明されていないのかい?」
「無節操ということだけは、片岡警視長から知らされています」
「あはは、オヤジさんらしいや」
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