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梶矢が口の横に手の平をあてて、小声で言った。
「アザミ班長のフェロモンは、男性相手に効果を発揮するらしい」
氷動はようやく合点がいった。
つまりビジネスホテルで氷動がアザミと初対面した際に、体調が散々おかしくなったのはアザミが近くにいたせいだったのだ。
「でも班長がフェロモンを意識的に最大出力しても、相手を性的に強く興奮させる程度で具合が悪くなるほどではないらしいし。あんまり警戒することもないと思うよ?」
安心させるようにカギヤが氷動に微笑みかけた。
そんな優しい先輩の言葉に、氷動は無表情のままボソリと返した。
「……自分は興奮状態が酷すぎて、吐いてしまいました」
「え!そんなこともあるの?……それはさすがに初めて聞いたなぁ」
ポカンと驚いた顔をした梶矢を見て、氷動は確信した。
片岡からも同じことを言われたが、あれは本当だったのか。
他の班員は耐えられたのに、自分だけ吐いてしまうなんてつくづく情けない。
その時、ドアがノックされた。
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