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「警察を免職された後『96』に入れてもらえて、助かったくらいだよ」
人の良さそうな外見とは裏腹に、梶矢の発言は時々、氷動の予想のナナメ上に飛ぶ。
懲戒免職というのは公務員の中で一番重い処分であり、一般的な言い方だと解雇に相当する。
「……なにをしたんですか?」
「鍵を開けただけなんだけどね」
「鍵?どこのですか?」
「警視総監室の中にある金庫」
警視庁の頂点に何をしているんだ、この人は。
いや、もしかしたら今のは笑うところなのか?
どう反応していいか分からずに、無表情のまま氷動は固まってしまった。
「でもね、何か盗んだわけじゃないんだよ?鍵を開けて、また閉めただけなんだけどなぁ」
「組織のメンツを潰すには、充分すぎだと思います。もしかして梶矢さん……」
「うん!僕は鍵を開けることが、大好きなんだ!」
梶矢の笑顔がキラキラと輝いた。
「実家が鍵屋だったんだ。子供の頃から鍵をオモチャ代わりに育ってきてね。それが困難なものであればあるほど開けたい欲求にかられて、抑えがきかなくなってしまうんだ」
鍵開けの変態……もとい天才。
なるほど「96・アザミ班」には、ぴったりの人材なのかも知れない。
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