【05】極秘データを奪え

5/8

1484人が本棚に入れています
本棚に追加
/244ページ
「警察を免職された後『96』に入れてもらえて、助かったくらいだよ」  人の良さそうな外見とは裏腹に、梶矢の発言は時々、氷動の予想のナナメ上に飛ぶ。  懲戒免職というのは公務員の中で一番重い処分であり、一般的な言い方だと解雇(クビ)に相当する。 「……なにをしたんですか?」 「鍵を開けただけなんだけどね」 「鍵?どこのですか?」 「警視総監室の中にある金庫」  警視庁の頂点に何をしているんだ、この人は。  いや、もしかしたら今のは笑うところなのか?  どう反応していいか分からずに、無表情のまま氷動は固まってしまった。 「でもね、何か盗んだわけじゃないんだよ?鍵を開けて、また閉めただけなんだけどなぁ」 「組織のメンツを潰すには、充分すぎだと思います。もしかして梶矢さん……」 「うん!僕は鍵を開けることが、大好きなんだ!」  梶矢の笑顔がキラキラと輝いた。 「実家が鍵屋だったんだ。子供の頃から鍵をオモチャ代わりに育ってきてね。それが困難なものであればあるほど開けたい欲求にかられて、抑えがきかなくなってしまうんだ」  鍵開けの変態……もとい天才。  なるほど「96・アザミ班」には、ぴったりの人材なのかも知れない。
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1484人が本棚に入れています
本棚に追加