【05】極秘データを奪え

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「黒沼という男が、初対面の人間に『極秘データ』に関することを話すのでしょうか?時間をかけて信用させてからならまだしも……」  と、質問した氷動に、片岡が地味な口調ながらもハッキリと言い切った。 「警察が出来ないことを手段を選ばずに実行する。そして本来なら入手できない情報や証拠を手に入れる。それが『96』の最大の存在意義だ」  海外とは違い日本において、おとり捜査は禁止されている。  身分を偽り捜査対象者に近づくという意味では、アザミの行為も該当するだろう。  しかしそれはアザミが「警察組織の人間」であった場合だ。  警察への捜査協力はしているが、アザミの肩書きは非合法チーム「96・アザミ班」の班長なのである。 「黒沼は屋多野組(やたのぐみ)の若頭補佐の一人だが、次期若頭とも組長候補とも言われ、組の中でも一目置かれている実力者でもある。一筋縄ではいかんだろうが……」     片岡は、地味につぶやいた。 「今だけは、アイツに任せるしかない」
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