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もしもコイツが警察官なら、小道具としてグラスを手にしていても任務中に酒は飲まねぇだろう。
それに手にしているグラスとは別の酒の匂いをさせているってことは、すでに他の店で飲んだ後、ハシゴしてこの店に来た酔っ払いってわけか。
俺が愛人に似てるだと?
なんだコイツ、男が趣味なのか?
本当だったら手荒いマネをしてでも追っ払いたいところだが、万が一、ここ地元の同業者のイロだったとしたら……。
実際に同性を好む同業者がいることも知っているだけに、まったくありえないとも言い切れない。
これが原因となり、後でトラブルに発展しても厄介だ。
適当に何杯か付き合って、適当に誤魔化して、適当な時間になったらRホテルに戻ろう。
ただ、それだけのことだ。
「とりあえず、今は慎重に対応した方がいいだろう」という結論に至った黒沼は、腹を決めてソファに深く座り直した。
その慎重さが、アザミの罠に陥ることになるとも知らずに。
黒沼の予想よりもグラスの数は増え、あれから既に一時間半以上が過ぎていた。
店内にいたカップルが帰ったため、黒沼とアザミの貸切状態になっている。
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