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こうなった理由は、ことさら酒を美味くするアザミの話術だった。
他愛もない雑談であるのに聞く者を飽きさせることなく、聞き上手でもある。
楽し気な表情と耳に心地よく響く低い声は、時に艶を帯びた。
そして黒沼は気付かぬうちに、いつも以上にフェロモンを纏ったアザミと、たっぷり過ごしてしまっていたのだ。
いつの間にか二人の距離は縮まり、今では完全に密着して並んでソファに座っている。
黒沼は上機嫌でアザミの肩を抱き、笑顔まで向けていた。
しかもその笑顔の下では、スーツに包まれたアザミの肉感的な体がどうしようもなく気になり始めていた。
この男は一体どんな風に抱かれているのだろう。
実に残念だが、同業者のイロに手は出せねぇから今回は我慢だな。
そのやらしい声で乱れる姿を見てみたかったぜ。
そんな考えで頭がいっぱいになってしまう自分に驚きながらも、嫌悪は感じなかった。
「アンタのイロは、どこの組だい?」
「……組?兄さん、やくざだったのか?」
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