1484人が本棚に入れています
本棚に追加
二人はもう一度、深くキスを交わした。
「ありがとう、兄さん……いつか必ず会いに行くよ……」
そう言うとアザミは黒沼に強く抱きつき、にんまりした笑顔を隠したのだった。
港の見える街から、はるかに離れた小さな街のビジネスホテルM。
ここにアザミが到着したのは、もう夜が明け始めた頃だった。
部屋の中を調べて安全を確認すると、アザミはスーツを脱ぎ捨てシャワーを浴びる。
「緊急事態でなければ、哀れな俺に情けをかけてくれた黒沼兄さんとホテルに行っても良かったんだが」
アザミは体を洗い流しながら決意した。
「途中で終わらせなきゃならねぇ作戦ってのは、俺自身にダメージがくるな。今後は控えよう」
バスローブを羽織り、ユニットバスから出てきたアザミは、途中コンビニで購入したペットボトルの水を一気に飲み干した。
「さてと……」
アザミはケータイを手にすると、どさりとベッドに腰かけた。
「私だ」
こんな時間にも関わらず、片岡警視長の声はいつもと変わらず地味だった。
最初のコメントを投稿しよう!