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アザミは間違いのないように、確実にハッキリと伝えた。
「F市、高級質店『ノワール』。以上」
「よくやった、感謝する」
二人の会話はこれだけだった。
通話を切ると、次の相手の番号を押す。
アドレス帳からの短縮ではなく、必要な番号は頭に入れているのだ。
ツーコールで今度は猛烈に眠そうな声の相手が出た。
少年のような、少女のような、若い声だった。
「……あ、ども……班長っスか?ん~お疲れさまっス」
「おう、マリネ起きてたのか?」
「ん~メッチャ眠かったスけど、班長からの連絡が来るまでは……って、頑張って待ってたんスよ?偉いっしょ?いっぱい褒めていいスよ?」
アザミを班長と呼ぶ以上「96・アザミ班」のメンバーではあるはずだが、マリネと呼ばれた相手は子供のようにぐずって甘えている。
「あーいい子だ、いい子だ。目の前にいたらハグしてキスしちまってたなぁ」
唇をキスの形にして弾けさせ、チュッと音を鳴らして聞かせてやった。
「ん~!やっぱりボクも、そっちに行った方が良かったじゃないスか!」
残念そうにマリネが呟いた。
「班長から全然連絡が来ないから、ボクが一生懸命作った『最低愛人メール』をスルーして、標的とホテルでお楽しみ中なのかと思ったスよ」
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