【08】簡単な任務のはずだった

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【08】簡単な任務のはずだった

 午前9時。  コンクリートの壁と床の部屋。  アザミが片岡警視長に報告を入れた日、氷動とカギヤは片岡に呼び出されて現在の状況を説明されていた。  今後も「極秘データ」を管理するのではないかと「96」がマークしている屋多野組(やたのぐみ)の若頭補佐、黒沼。  文字通り体を張ってアザミが得た「黒沼の次の潜伏予定地はF市、高級質店ノワール」という有力情報が、片岡の口から地味に伝えられる。 「こんな短時間ですごい……班長は一体どうやって……」  と、言いかけた氷動ではあったが、なんとなく察して口を閉じた。  アザミ班長は媚薬(びやく)の固まりなんだ。  アザミ班長のフェロモンは、男性相手に効果を発揮するらしい。  昨日、先輩のカギヤが教えてくれた「アザミの秘密」を思い出したのだ。  それとともにアザミと初顔合わせをした際、自分の体に引き起こされた激しい変化や、班員の中では初めて嘔吐したことも思い出してしまい再び怒りが湧いてくる。  しかし「人としてはどうだろう」というアザミではあるが、今回迅速に結果を出したことに対しては氷動もすごいと思わざるを得ないことが悔しかった。
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