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片岡は、氷動とカギヤを見た。
「このままでは持久戦になる。よって張り込みを一旦解除し、周辺を見回りさせることにした。君たちには捜査員がいない時間に店内に忍び込み、情報を集めてほしい」
「了解」
力強く声が重なった。
「なお今回の作戦にあたり、これをマリネから預かっている」
片岡はスーツの内側から、スマホの充電に使用する手のひらサイズのバッテリーのようなものを取り出すとカギヤに手渡した。
「あ!『大食いちゃん』ですね」
カギヤは笑顔で受け取った後、それが何かを知らない氷動に向かって説明する。
「まだ氷動君は、班員のマリネちゃんとは会っていないんだよね?」
「はい」
「マリネちゃんは物作りが得意なんだ。海外の映画でスパイが敵のオフィスに忍び込んで、パソコンからデータをコピーする場面ってあるでしょ?」
「早くしないと見つかるぞ、ってハラハラさせるやつですかね?」
「そうそう!でもこの『大食いちゃん』を使えば、時間をかけて目的のデータを探し出してから、盗み出すなんてことはしなくていいんだ」
「どういうことでしょうか?」
「なんとパソコンに入っている中身まるごと!あっという間にコピー出来ちゃうんだよ!」
深夜のテレビの通販番組なら、ここで拍手と歓声が入る場面だな、と氷動は思った。
物作りが得意という班員、マリネか。
実力も相当ありそうだが、アザミ班長やカギヤさんのように相当変わった奴なんだろうな……。
後に氷動は自分の推測が、ほぼ外れていなかったと知ることになる。
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