【08】簡単な任務のはずだった

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 片岡は、氷動とカギヤを見た。 「このままでは持久戦になる。よって張り込みを一旦解除し、周辺を見回りさせることにした。君たちには捜査員がいない時間に店内に忍び込み、情報を集めてほしい」 「了解」  力強く声が重なった。 「なお今回の作戦にあたり、これをマリネから預かっている」  片岡はスーツの内側から、スマホの充電に使用する手のひらサイズのバッテリーのようなものを取り出すとカギヤに手渡した。 「あ!『大食いちゃん』ですね」  カギヤは笑顔で受け取った後、それが何かを知らない氷動に向かって説明する。 「まだ氷動君は、班員のマリネちゃんとは会っていないんだよね?」 「はい」 「マリネちゃんは物作りが得意なんだ。海外の映画でスパイが敵のオフィスに忍び込んで、パソコンからデータをコピーする場面ってあるでしょ?」 「早くしないと見つかるぞ、ってハラハラさせるやつですかね?」   「そうそう!でもこの『大食いちゃん』を使えば、時間をかけて目的のデータを探し出してから、盗み出すなんてことはしなくていいんだ」 「どういうことでしょうか?」 「なんとパソコンに入っている中身まるごと!あっという間にコピー出来ちゃうんだよ!」  深夜のテレビの通販番組なら、ここで拍手と歓声が入る場面だな、と氷動は思った。  物作りが得意という班員、マリネか。  実力も相当ありそうだが、アザミ班長やカギヤさんのように相当変わった奴なんだろうな……。  後に氷動は自分の推測が、ほぼ外れていなかったと知ることになる。
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